「微生物 酵素」リズム3の還元触媒で抗酸化力を高める野菜作り土作り…解説

リズム3の還元値 測定

微細還元アミノ酸および含有生成物「リズム3」の分析

アミノ酸とアンモニア(生成物)の電解前後の定量分析には、アミノ酸分析システム(島津LC-10A)を用いた。

測定は、分析カラムshim-packAmino-Na,アソモニアトラップカラムISC-30Naを用い、オーブン温度60℃,サンプルクーラー4℃の条件で行った。

アミノ酸の電解酸化によって生じた生成物は、有機酸,アンモニア,アルコールおよびCO2であった。

有機酸とCO2は、有機酸分析装置(島津LC-10AD)を用いて、またアルコールは、スチームクロマトグラフ(大倉SC-1)を用いて分析。

「リズム3」微細還元アミノ酸酵素溶液の生成物

アミノ酸の電気化学的研究は、古くから行われている。

アミノ酸は、一COOH,-NH2,-CH3のような基を有する。

アミノ酸の吸着性や酸化還元過程を含む電気化学的反応は、他の有機化合物のモ デル反応とみなすことができるので興味深い。

鎖式アミノ酸であるグリシソの電気化学的酸化は、カルボキシル基の吸着過程を経て、脱炭酸するという反応機構が提案されている。

グリシソの電気化学的酸化のinsituFT-IR法による研究によれば、酸化過程で生成するシアソ化物イオソが白金電極に強く吸着し、グリシソのさらなる酸化を抑制するといわれている。

電気化学的酸化法と赤外分光法による研究で、グリシソをはじめとする鎖式アミノ酸は、強アルカリ溶液中において末端COO”‘基で電極に強く吸着し、その吸着濃度は +0.9V(vs.Ag/AgC1)で最大に達し、t+1.1VでCO2,NH3,ギ酸に分解する。

さらに定電流電解によって1mM(1M・1mol dm轡3)の鎖式ア ミノ酸が2時間の電解で、ほぼ100%分解することも明らかにしている。

一方の芳香族および複素環式アミノ酸については、Malfoyらが回転リング電極(金,白金,炭素)を用い、これらのアミノ酸のうちトリプトファソ,チロシン,ヒスチジソのみ が電極で酸化されることを報告しているが、電極での吸着過程や酸化分解過程についての詳細は明らかにされていない。


-「微生物酵素」リズム3による窒素酸化物への無害化技術 -

化学合成した酸素を含むモリブデン硫化物の触媒に、天然の硝酸還元酵素[1]と類似した反応活性があることを見いだした。

水質汚染物質として、規制されている硝酸イオン(NO3-)を無害化するための、新たな触媒開発につながると期待。

窒素肥料[2]の大量消費により、環境汚染が深刻化しています。

硝酸イオンは、化学的に安定した物質で水に溶けやすい性質です。

地下水や河川に蓄積し、飲料水を汚染したり、湖沼の富栄養化や赤潮をも引き起こします。

2017年の国際共同研究グループで、硝酸イオンを無害化するための触媒として、モリブデン硫化物が有望な候補であることを見いだした。

触媒作用の起源を明らかにするため、モリブデン硫化物の性質を電子スピン共鳴分光法[3]などで評価した。

酸素を含む5価のモリブデン(Mov=O、オキソモリブデン)が、反応を促進するための活性種であることを突き止めました。

この活性種が、天然の硝酸還元酵素と類似した構造を持つことを明らかになった。

酵素が持つ優れた特性を触媒に用いて、活性化するための大きな一歩になると考えられます。

生体酵素が持つオキソモリブデン構造(左)は、硝酸イオン(NO3-)の図

目次

背 景

人口増加に伴う過度な窒素肥料の利用により、水質汚染が深刻化しています。

窒素肥料に含まれる硝酸イオン(NO3-)は、環境に蓄積しやす,飲料水の汚染,湖沼の富栄養化や、赤潮発生の原因になります。

硝酸イオンの環境への排出は、厳しく規制されています。

現在、硝酸イオンを無害化する方法として、微生物が持つ硝酸還元代謝[4]を利用した排水処理技術が用いられています。

しかし、硝酸が高濃度だと微生物が生育できず、廃液を処理できないという問題があります。

また、化学的に硝酸を処理するためには、高価な貴金属触媒を使う必要があります。

しかも、強酸性条件でないと反応が起きないなど、環境負荷の観点からも問題があります。

モリブデン硫化物(MoSx)を触媒として用いることで、温和なpH環境(pH 7)で、選択的に硝酸イオンを還元できることを見いだしました注1-2)。

微生物が持つ硝酸還元酵素には、モリブデンが使われています。

そのため「モリブデン硫化物触媒にも、酵素と似た活性サイトがあるのではないか?」と仮説を立てました。

  • 注1)Y. Li, A. Yamaguchi, M. Yamamoto, K. Takai, R. Nakamura, Molybdenum Sulfide: A Bioinspired Electrocatalyst for Dissimilatory Ammonia Synthesis with Geoelectrical Current, J. Phys. Chem. C, 2017, 121, 2154-2164
  • 注2)2018年3月29日プレスリリース「温和な環境で働く人工脱窒触媒

製品化とメソッド(手法と成果)

酸素を含む硫化モリブデン粒子を硝酸還元触媒として用いました。

還元剤を加えた環境で、モリブデン硫化物表面における化学種(モリブデン原子中の電子数とスピンの状態、モリブデン酸素間の結合)がどのように変化するかを、電子スピン共鳴分光法などを用いて測定しました。

亜ジチオン酸イオン(S2O42-)を還元剤[5]として触媒を含む水溶液に添加することで、硝酸還元反応を駆動しました。

電子スピン共鳴分光法で、モリブデン原子中の電子数とスピンの状態を調べたところ、還元剤の添加により、酸素を配位子に持つ5価のモリブデン種(MoV=O)が生成するこが分かりました。

触媒を含む溶液に、硝酸イオンを添加しました。

5価のモリブデン種が消失し、硝酸イオンの還元生成物である亜硝酸(NO2-)とアンモニウムイオン(NH4+)が生成することを突き止めました(図1)。

この結果より、酸素を含む5価のモリブデン(MoV=O)が活性種となり、硝酸イオンが還元されていることが分かりました。
電子スピン共鳴分光法により特定されたMoV=O中間体と反応機構の概念図の画像

一方で比較として、酸素を含まない硫化モリブデン粒子を触媒として用いた場合には、硝酸還元反応は全く進行しませんでした。

また、電子スピン共鳴分光法を用いた計測においても、MoV=Oの生成は観測されませんでした。

つまり、活性種であるMoV=Oを効率的に触媒表面に作り出すには、モリブデンの配位子に酸素と硫黄の両方が必要であるということを突き止めました。

モリブデンを酸素と硫黄で配位した構造は、天然の硝酸還元酵素と共通しています。

天然酵素は、モリブデンを活性中心に持ち、硫黄と酸素が配位したプテリン構造[6]をとっています(図2)。

そして、酵素反応においても、MoV=Oが生成し、硝酸イオンの活性化が進行することが分かっています。

よって、化学合成したモリブデン硫化物には、天然の酵素と類似した反応活性サイトがあることが明らかになりました。

自然界の硝酸還元酵素の活性中心の図

補 足 説 明

  • 硝酸還元酵素
    硝酸イオン(NO3-)を亜硝酸(NO2-)に還元するための酵素。
    生体内では、エネルギーを獲得するためや、生体分子の合成に必要な窒素原子を取り込むために使われる。
  • 窒素肥料
    植物の生育に欠かせない窒素を主成分とする肥料。
    塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などを含む。
  • 電子スピン共鳴分光法
    物質を磁場の中に置いた状態で電磁波を当てると、共鳴現象により、ある特定の光を強く吸収することが知られている。
    この現象を利用して物質中の電子状態を特定する手法を電子スピン共鳴分光と呼ぶ。
    全ての分子の電子状態を観測できるわけではないが、観測できる分子については、極めて詳細な情報が得られる。
  • 硝酸還元代謝
    ヒトは、酸素の持つ酸化力で糖を分解し、エネルギーを獲得している。
    しかし、酸素ではなく、硝酸の酸化力で糖を分解し、エネルギーを獲得する微生物もいる。
    このような代謝の方法を硝酸還元代謝という。
  • 還元剤
    硝酸イオンは化学的に安定なため、それを還元するためにはエネルギーを加える必要がある。
    ここでは、還元剤がエネルギーを触媒に供給する役割を持つ。
  • プテリン構造
    炭素と窒素からなる分子であり、二つの環がつながった形を持つ。
    酵素が触媒として機能することを補助する補因子としての役割を持つ。
  • 持続可能な開発目標(SDGs)
    2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のためのアジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。
    持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲットから構成され、発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいる(外務省ホームページから一部改変して転載)。

酸化還元反応を触媒する酵素の総称。オキシドレダクターゼともいう。


細胞の生命を維持するためにはエネルギーが必要であるが、そのエネルギーを供給したり、代謝の過程で必要な物質を生成すると同時に不要な物質あるいは外来性の異物を分解するのが酸化還元反応で、その反応を触媒するのが酸化還元酵素である。

生体内には、種々の酸化還元酵素が存在しており、これまでに約1100種が確認されている。

生体酸化還元反応の型には、水素原子の移動,電子の移動,酸素原子の付加という三つの型がある。

一般的には、電子の移動を伴う反応といえる。

還元剤として働き、電子あるいは水素原子を与えて酸化されるものを電子供与体あるいは水素供与体とよび、酸化剤として働き,電子あるいは…水素原子を受け取って還元されるものを電子受容体あるいは水素受容体とよぶ。

一般に酸化還元酵素は、電子供与体および受容体の一方または両方に関して、比較的高い基質特異性をもっており、それに従って分類することができる。

また、酸化還元反応の様式、性質,供与体と受容体の種類などにより
 (1)脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)、
 (2)還元酵素(レダクターゼ)、
 (3)酸化酵素(オキシダーゼ)、
 (4)酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)、
 (5)ヒドロペルオキシダーゼ、
 (6)スーパーオキシドジスムターゼに、分類することもできる。

これら(1)~(6)の酵素群が触媒する反応と特徴は以下のとおりである。

(1)脱水素酵素は、酸素分子以外の分子を水素受容体として、基質から脱水素する反応を触媒する。
    NAD+または、NADP+を補酵素とするもの(ピリジン酵素)が多い。
    このほか、補欠分子族(補欠分子団)としてFADまたはFMNをもつもの(フラビン酵素)もある。

(2)還元酵素は、酸素分子以外の分子を水素受容体として脱水素する反応のうち、基質を還元する反応を触媒し、広義の脱水素酵素に属し、ピリジン酵素が多い。

(3)酸化酵素は、酸素を水素の受容体とする反応を触媒する。

    多くはフラビン酵素である。
    例外としては、チトクロムオキシダーゼがあり、これはヘムを補欠分子族とするヘミン酵素である。

    また、銅を必要とする銅酵素もある。

(4)酸素添加酵素は、分子状酸素を直接基質に渡す反応を触媒することにより、代謝物の合成と分解に関与する。

(5)ヒドロペルオキシダーゼは、H2O2や有機過酸化物を還元する反応を触媒することにより、過酸化物を分解する。

(6)スーパーオキシドジスムターゼは、スーパーオキシドラジカルを受容体とする反応を触媒することにより、スーパーオキシドを除去する。

酸化還元酵素

オキシドレダクターゼともいう。

酸化還元反応を触媒する酵素の総称、酸化還元の様式によって、酸化酵素,元酵素,オキシゲナーゼ,ペルオキシダーゼ,デヒドロゲナーゼ,ヒドロキシラーゼなどがある。

いずれの酵素も補酵素または補欠分子族として、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD),フラビンモノヌクレオチド(FMN),ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD),そのリン酸エステル(NADP),鉄ポルフィリン,銅などの金属原子を含む、生体の呼吸,発酵,生合成,エネルギー獲得に重要な役割を果たす。

この一群の酵素によって酸化される基は

(1),(2)-CHOおよび,(3),(4),(5),(6)フェノール類,

などがある.[別用語参照]酵素命名法
酵素分類の主群の一つで、酸化還元反応を触媒する酵素の一群。

生体内の酸化は普通、代謝物質の脱水素反応として起る。
 (1) その際酸素が直接に水素の受容体となるときには、その酸素を酸化酵素 (オキシダーゼ) と呼び。
 (2) 色素その他の代謝物質が受容体となるときには、その酵素を脱水素酵素 (デヒドロゲナーゼ) と呼ぶ。
 (3) ある物質の還元反応に注目する際には、特にその酵素を還元酵素 (レダクターゼ) という。
 (4) 分子状酸素とある物質を直接に結合させる酵素もあって、オキシゲナーゼという。

酸化酵素には、チトクローム酸化酵素,アスコルビン酸酸化酵素などがあり、脱水素酵素には…コハク酸やリンゴ酸脱水素酵素,還元酵素には、硝酸呼吸での硝酸還元酵素など、オキシゲナーゼの例としては…ジャガイモの切り口の黒化に関係のあるモノフェノールオキシダーゼなど…多くの種類がある。

酸化還元反応を触媒する酵素の総称

生物が酸素を吸収して、有機化合物を酸化する現象(広く呼吸とよばれた)の研究の過程で、19世紀末以降この種の酵素が多数生体から抽出されるようになった。

酸化のエネルギーの利用過程に関係する酵素だけでなく、多くのたいせつな代謝過程に関係する酵素が含まれる。

生体内では、種々の酸化還元反応が起きるが、それらは水素原子の移動,電子の移動,酸素原子の付加のいずれかのかたちをとる。

多数の酵素は、それぞれ電子または水素原子を与えて酸化される電子供与体(還元剤)、および電子または水素原子を受け取って還元される電子受容体(酸化剤)の一方または両方に対して特異的に働く。

生体内で酸化還元反応を触媒する酵素

水素原子の移動を伴う反応を触媒する脱水素酵素、電子の移動を伴う反応を触媒するチトクロム類や、酸化酵素,酸素原子を基質に取り込む反応を触媒する酸素添加酵素などが主なもので、いずれも生体内のエネルギー利用や代謝過程において重要な働きをする。

オキシドレダクターゼ
一つの基質を酸化し,他の基質を還元する反応を触媒する酵素

酸化還元反応は、エネルギー獲得のための反応として好適である生体内では、酸化還元酵素がこの反応の触媒として働き、円滑に反応を進める働きをしている。

酸化還元酵素では、酵素タンパクが基質の酸化還元に好適な場を与える一方、補因子が基質と電子の交換を行っている。

適当な方法で、補因子と電極との電子移動を行わせることにより,、酸化還元酵素反応と電極反応をカップルさせることができる。
このような技術は、バイオセンサ構築など広い範囲での応用が期待される。

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